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満足感とは?

ーー『脳が「生きがい」を感じるとき』グレゴリーバーンズより引用ーー

プロローグ

脳の深いところには、行動と報酬を結びつける構造がある。私は十年にわたって研究した結果、おそらく満足感の鍵となっている部位がチャレンジと新しい体験によって成長することを知った。新しいことへの挑戦や初めてのことは、避けて通りたいもののように思われがちだが、じつはそれらこそが満足感をもたらす要因となっているのだ。その証拠は満足感ともっとも関わりの深い場所、つまり脳に見つけられる。

まずはじめに、深い満足感は容易に得られるものではないことを認めなければならない。それはただチャンネルを選ぶだけで観られるテレビを1時間ほど観たあとと、しっかりエクササイズをして過ごしたあとの気分を比べてみればすぐにわかる。・・・

ここから第二の仮説が引きだされる。それは、満足感の本質は脳の中にあるというものだ。脳のどこからそのような感覚が生まれるのかがわかれば、もっと容易に満足感を得られることができるだろうし、その知識は満ち足りた人生を送る方法を指し示してくれるだろう。脳が満足感をつかさどっているというこの考え方をだれもが受け入れるとは思わないが、なんらかの挑戦を成功させたあとにわきあがってくる満ち足りた感じは、喜びや悲しみや怒りと同じく確かに存在するものだ。

けれども、満足感というものは、他の感覚と違ってたまたま感じるものではない。それは、自分自身で創り出さなければならないものであり、そこには動機が必要となってくる。

動機についてわかっていることの大半は神経伝達物質のドーパミンと関わっている。1990年代半ばまで、科学者の多くはドーパミンを脳内の快楽物質と見なしていた。確かにドーパミンは食べ物やセックスや薬物といった快楽に反応して分泌されるが、一方、騒音や電気ショックなど不快なものへの反応としても分泌される。実際、ドーパミンはこれらの刺激に先んじて分泌され、快楽物質というよりはむしろ予感物質として働いている。

ドーパミンの昨日についてもっとも手短に説明すれば、それはあなたの運動システムーーー肉体ーーーになんらかの行動をさせている、といえる。この見方が正しいとすれば、そもそも強い満足に伴って体中が熱くなるような感覚はドーパミンによるものとされているのだから、そのような満足感は目標を達成したときよりも、その目標に向かってせっせとドーパミンを出しているときのほうが多く感じられるはずだ。

ではどうすれば脳の中に流れるドーパミンの量を増やせるのだろう。その鍵は「新しさ」にある。脳の活動を画像化する実験が数多く行われ、ドーパミンを分泌させるには新しい体験がとても有効だということがわかった。なぜなら新しい体験は新しい行動を促すからだ。初めて鑑賞する絵画でも、新しい言葉を覚えることでも、楽しいこと、楽しくないこと、なんでもよいのだが、重要なのはそこに驚きがあるということだ。脳は、驚きによって刺激される。それはわたしたちが予想できない世界に生きているからで、好むと好まざるとにかかわらず、私たちはあるがままの世界を受け入れる脳を与えられている。あなたがいつも新しい体験を好むわけではないとしても、あなたの脳はそれを好む。脳はそれ自身の心をもっていると言ってもいい。

この「新しさの原則」は、脳幹の一番上にあるひとかたまりのニューロンの働きから推定したことだ。この原則が意味するところを考えれば考えるほど、それが私たちの生活をより豊かにするように思えて興味がそそられる。だがこの原則は実験室で真偽が確かめられる類いのものではない。

結局人生の舞台の広さを決めているのはあなたの行動である。あなたは何を、何故求めているのだろう。それを理解するには、脳と行動のつながりについて知っておいたほうがいい。あなたの真の欲求、すなわち脳の新しさへの欲求を理解すれば、あなたは人生が想像以上に不思議で驚きに満ちたものだと知るだろう。

ん〜脳から見た満足感の定義。フロイトによる「苦痛を避けて快楽を得る」という快楽原理からではなく、「新しいものを好む」というのはとても面白いと思った。この本ではそれらを著者本人がランニングハイになろうとしたり、SMクラブに行ったり!したりしながら検証していくとても面白い本だ。

脳が「生きがい」を感じるとき脳が「生きがい」を感じるとき
Gregory Berns

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