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2007年11月22日

●スタティック練習

食欲増進期間はようやく収束の方向に向かい、やっと普通の食生活に戻ってきた。いったいあのバカみたいにチョコレート食べたい病はなんだったんだろう?ホルモン異常とかだったりするのかなあ??

先日、フリーダイビング関係の行事に参加する機会があって(もちろんスタッフ、、というより野次馬?参加ですが)、また少し前からフィンキックの練習も月1回くらいのぺ−スで地味〜に続けていたので、来年は海の練習にも参加してみようかなという気持ちが少しずつ芽生えてきた。

フリーダイビングとは、スキューバタンクなど一切背負わずに、自力で息を止めて素潜りすること。一番有名なのが海のコンスタントという競技でロープ沿いに垂直に潜行し、あらかじめ申告しておいた深さのところについているタグをとって戻ってくるというもの。

だけど、それ以外にプール競技というのがあって、ダイナミックという競技は息を止めて水中に潜りながら泳ぎ、何メートル進めるかというもの。フィンありとなしという2つのカテゴリーがあって、去年バラエティ番組のQさま!っていうのでは、このダイナミックウィズアウトフィンという競技にみんな参加していたのだった。そいや競技会でまだブレイク前のにしおかすみこも見たな〜ふつーにキレイな足でフォームもとっても美しかった。

それはさておき、もうひとつ競技としてスタティックというのがある。「静的な」と訳すことができるが、これは「水中でどのくらい長く息を止めていられるか」を真剣にやる競技なのだ。
息を止めるから苦しい、単なるガマン大会だと普通は思うだろう。現に私もそう思っていた。確かに、最後はやっぱり苦しくなってくるんだけれども、実はスタティックはとても奥が深いものだ。

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2006エジプトフリーダイビング世界選手権ニッカ選手本番直前
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世界選手権の様子。4人同時に息止め中

プールにウエットスーツで入り(からだの動きを止めるので冷える)、からだ中の力を抜いて顔を水につけてぷかーんと浮かぶ。はたからみるとおそらく大変滑稽な風景。だけど、このからだの力を全部抜くということがいかに難しいことか。

だけど、からだの力を抜ききって、頭の中もできるだけからっぽにすると、息を止めている時間が苦しくなく、むしろ楽しくなり、時間の感覚もなくなってくるのだ。
そして、何度もやっていくうちに、だんだん息を止めるという行為にからだが慣れてきて、誰でも記録が伸びてくる。陸上で息を止めると1分くらいでもかなり苦しいのに、水中でからだの力を抜けると、まったく問題なくなってくる。

でも、自分では力を抜いてるつもりでも、私の場合は肩のまわり、腰まわりは力が入りやすく、脱力するのが難しい。水の中で力が入ってるところをつんつん突かれると反発してしまう。力が入っていなければ、くらげのように突かれてもぐにゃぐにゃするのだけれど。

そういったからだのことが、息止めの練習してるとすごくよくわかってくる。
当然リラックスできてないと、すぐに苦しくなる。非常にメンタルの部分も強いのがこのスタティックの特徴だ。
もちろん、ある程度危険を伴う練習なので絶対にひとりでは練習してはいけない。どんな選手でも必ずバディ単位、海は当然のことながらこうしたプールでも決して無理はしないというのが鉄則だ。

私は幸運にもたまたま友人で日本代表のみみずんにつきあって彼女の練習を間近で見ているし、その彼女に指導してもらっている。友人という気軽さもあってリラックスしやすいというのもあるけれど、彼女のアドバイス、指導が大変素晴らしいので、とても楽しく、毎回気づきも多い。特にわたしは記録を更新したいとか競技会に出たいという明確な目標はないので、そんなに苦しい練習もしないからよけいだと思うけれども。

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競技中。篠宮選手のエレガントで完璧なサポート

面白いのが、フィンキックの練習でも息止めでも、実生活でもなんでも言われるアドバイスはあまり変わらないということ。
「からだの軸がぶれないように、芯をしっかり持つ」
「バランス感覚を大切にする」
「肩の力が入りやすいからもっと力を抜いてリラックスすること」
「がんばらなくていい。ただやるだけ」

これはからだのことを言われていると同時に、自分の生き方を指摘されているようでもある。
毎回言われるたびに、どこか心の奥深くのほうが「・・・そうなんです」って言ってる気がする(笑)。それだけからだとこころは本当にイコールなのだなと最近つくづく思う。

スタティックの練習をはじめてちゃんとやったのが去年のエジプトで行われたフリーダイビング世界選手権の練習日のこと。遊びでやってみよっか?っていうことになって、選手のみんなと一緒のときにトライしてみた。そのときに感じたものすごい解放感を忘れることはできない。全然息苦しくなくて、すごく気持ちがよくて、太陽と水があったかくてぽかぽかしていて(屋外だった)クラニオのセッションを受けてるときに感じる気持ちよさにとても似ていて、息を止めてるなんてことはすっかり忘れてしまうほど。だんだん心臓の鼓動が聞こえてきてそれが早くなってきて、ふと急に「あれ、これって大丈夫?」とか思って上がったけど、最後まで全然苦しくなかった。もちろん初挑戦だから記録的にはたいしたことないけど、すごく面白かった。そのときの心境にはその後の練習ではまだなれていないのだけれど、あれをまた体験してみたいな〜といつも思う。

この地味〜な競技、少し瞑想にも似ているかも。(瞑想を普段やってるかといえばしてないけどさ)フリーダイビングの競技そのものが普通のスポーツとは違って非常に静かな競技だけれど、とくにスタティックはその傾向が強い。
私は、もうすこし自分のからだと向き合うためにも、そして当然水中で息を長く持たせるのはドルフィンスイムにも海の競技にも必要なことなので、こうした練習を機会があればときどきやりたいなと思う。あんまり練習できるプールもないし、必ずパートナーが必要なのでなかなかできないんだけどね。

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みんなで練習中 in Egypt 2006

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