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2009年12月07日

●歓喜の歌

ふぅ〜終わった・・・。7月から練習してきた第九合唱団での活動も昨日の本番で集大成。昨日の夜は、頭の中にまだずっと音楽が鳴り響いていた。

11月後半に入ってから、本番を間近に控えて練習回数も多くなり、要求されるレベルも一気に上がった。暗譜なんてできるんかいな、と思っていたドイツ語の歌詞も、車の中で練習CDをしつこく聴きながら歌ってるうちに、なんとかなりそうな感じにはなってきた。

合唱というのは、とにかく待つ時間が長い。ベートーベン第九の場合、合唱がつくのは第4楽章の後半なんだけど、入場は第3楽章の前。第3楽章の間はずーーっと舞台に立ったまま身動きもとらずにじーっとしていなければならない。で、合唱が始まったら、あっっという間にエンディング、という感じだ。

観客席も満員なら舞台にもオーケストラいれると400人近いメンバーでぎゅうぎゅう詰め。合唱団が立つひな壇はなんと13段もある。わたしは一番後ろの列。一番後ろだから目立たないかというと全然そんなことはない。5階席とかからみると一番後ろのほうが高いので見えやすいほどだと思う。一番高い位置にいるので、スポットライトの位置も近くて暑い。歌ってるときに倒れる人もときおりいるとは聞いてはいたが、実際、わたしの2つ前に立ってた人は、待ってる間にくらっと立ちくらみみたいになっていた。

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午前中のリハーサルのあと、午後3時に開演。リハーサル室で待機する。舞台裏ってこんな風になってるのね〜といろいろ発見があって楽しい。劇場の公演は音楽だけでなくバレエみたいなものもあるから、リハーサル室は鏡張りのバー付き。グランドピアノも置いてある。

第九の演奏が始まりリハ室から舞台袖へと移動を開始する。ドキドキしてきた〜なんて人もいたけど、わたしはあまりこういうのは緊張しないみたいだ。ひとりで目立つことしなくちゃいけないってなればそういうのもあるかもしれないけど、第九合唱団なんて何百分の1だしね〜。
とはいえ、舞台に上がって満員の観客を見たときは、やっぱり少し鼓動が速くなった。微妙に緊張もしてるのかもしれない。やたらとノドも乾いていたし。

横須賀芸術劇場の第九演奏は、劇場直属の合唱団が、横須賀交響楽団と一緒に演奏する。市民による市民のための演奏会だ。(メンバーは横須賀市民とは限らないけれど)自分が今横須賀市民だという自覚はあんまりないけれど、(そう、葉山じゃなくて横須賀なんですね、うちは)でもこんな素晴らしい劇場で、世界的にも有名なマエストロ(秋山和慶先生)の指揮で、歌えるなんてそうそうあるもんじゃない。こういう機会を設けてくれていることにとても感謝する。

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第3楽章・アダージョを聞きながら、練習が始まった7月から今までのことをなんとなく想い出していた。今年に限ったことではもちろんないけれど、でもそれでもやっぱり今年の夏はちょっと特別な夏だった。なんだかいろいろなことがあったなあ、、、。練習が始まる前と今では、思いもよらなかったことがたくさん起こって、全然違う自分になっていることに気づく。でも、きっと今、いろんな意味で一区切りなんだな。第九を歌い終わったら、きっとまた新しい自分がいる、そんな気もしていた。

第4楽章、プレストが唐突に始まる。マエストロの指揮は本当に素晴らしく、指揮棒を見てればどう歌えばいいかわかります、と言っていた合唱指導の先生の言ってる意味がよくわかった。ほんとうに、すべてのパートの出だし、注意をしなくちゃいけないところ、ピアノで歌うところフォルテで歌うところ、全部指揮棒で、からだで、表現してくださるのだ。本当に丁寧で、しかもとても情熱的だった。本当にこの方は音楽を愛しているのだな、ということがよくわかった。指揮をしているまわりからなんかきっと大きなエネルギーが出ていたと思う。練習のときも素晴らしかったけど、本番での指揮は更にすごかった。合唱団はそれにうまく乗せられて、本番では自分たちのベストの歌声を出せたのだと思う。

合唱の最後、Gotterfunken! と歌い終わったあと、エンディングの高らかな旋律を聴いていたらじんわり涙目になってしまった。ああ、もうこれで本当に終わりなんだ、さびしいな、、、という気持ちと、歌えた!という喜びと。最後の1音が鳴り響いたあと、一瞬の静寂のあとに、ブラボーという声、観客のみなさんの長く続く拍手。うわあ、、これはなんか本当にすごいな。
アンコールで蛍の光を歌う。オーケストレーションされた曲で歌う蛍の光はまた格別だ。万感の思いってのはこういう感じなのだろうか、なんて思いつつ。

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そろそろ水仙が咲き始めたよ!

第九の合唱は「人間愛」を歌った高らかな歓喜の歌だ。人って素晴らしいじゃないか、兄弟よ!!みたいな感じの歌。生きてるってことは素晴らしいことだよね、と歌いながら本当にそう思っていた。
ちょうどこの日、友人のみみずんがバハマでフリーダイビングの日本新記録をまた出した。コンスタントウィズフィンという種目で-72m。

彼女と一緒に初めてエジプト大会に行ったのが3年前。そのときの記録が−61m。その頃、彼女にとって70mの世界はまだ遠かった。そこからあと、彼女はいろんな努力を重ね、何があっても挫けず、本当に紆余曲折を経て、この大会で70mの壁を初めて突破した。ずっと彼女が目標にしてきた夢見た世界。そこにようやくたどり着いた。彼女のひたむきな努力を間近で見ているだけに本当に感無量だ。

自分も3年前と今ではまた全然違う場所にいる。表向きに目に見える形でなにかすごいでかいことをしたとか、そういうことではないのだけれど、ここのところずっと、自分の中で「超えられない壁」だと思っていたことに挑戦し続けていた。それを超えさせるために、宇宙はいろいろな試練やら宿題を与えてくれた。ものすごくつらいと思った時期もあったし、なかなかいろんな結果を出せない自分に嫌気が挿したことも何度となくあった。

でもなんとなく、ようやく今、いっぱいいろんな経験をしてそれを超えて、新しいギアに入れ替わったようなそんな気がする。「だったらもっと早くできなかったのか」と思うようなこともあるけれど、でもやっぱりこの停滞したようにみえた時間は、自分にとってとても重要で必要な時間だったのだと今なら思える。

自分の仲間がそうやってひとつの壁を越えて、また新しいステージに向かおうとしている。それは私にとっては本当にうれしいことだ。そして私も同じように、新しい階段を上り始めたのがわかる。今まで地味に頑張ってきてよかったな、わたしはまだ目に見える結果としては何も出ていないけれど、でもこれから確実に何かが変わると確信している。その覚悟がようやく出来たとも言えるかもしれない。

Freude!(喜び!)
ベートーベンの第九、歓喜の歌に、魂の叫びのような、そんな思いも込めて歌った。たまたま、わりと軽い気持ちで応募した第九合唱団だったけれど、結果的にいろいろなことがつながってリンクして、今日を迎えることができた。

また新しいステージがこれからはじまる。たぶんきっと、もっと大きな何かに向かって、歩き始めることになるのだろう。それが何か、ということはまだおぼろげにしかわからないけれど、でもなんとなく今何をやるべきか、ということに関しては少しずつ見えてきた。
これからも、自分が信じた道を歩き続けるしかないし、困難に思える道でも、それを楽しいと思えばそれは間違いなくほんとうに楽しいことなのだ。

というわけで、みみずん、日本記録おめでとう!(つけ足しみたいでゴメンよ)
フリーダイバー平井美鈴オフィシャルサイト Purna〜プールナ〜

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コメント

 こんにちは、ばななん!
 やっと訪れる事が出来たわ、ブログ(笑)

 第九の本番、週末だったのねー!おめでとう♪ 経験できそうで経験できないよね、なかなか。 さぞかし迫力のある演奏になったのでしょうね。 たくさんの人が一つのことに集中すると、不思議なエネルギーが沸き起こるよね!  感動が伝わってきます。

  また来ますね!応援しているよ!

>miwaさま

わ〜い先生♪ご訪問ありがとう。
本番、すごくいい経験でした。楽しかった!

数で勝負!っていうわけでもないけれど、でも今年は男性も多くて先生たちは男声合唱を褒めてた。防衛大学の若いおにーさんたちがかなり活躍していたよ。だからたぶんすごい迫力もあったと思う。マエストロも「本番に強いですね、みなさん」と。一応決めなくちゃいけないところは全部とりあえず決まってた、、みたい。

歌ってるほうは必死だけど、それでもときどき聞こえてくるみんなの声の迫力にはゾクッとしたな。確かにみんなで同じ方向を向いたときのエネルギーって本当に凄いんだなって思った。

前日まではオケも「え、大丈夫?」って感じだったけど(笑)本番はかなり頑張ってた。また来年も応募しようかなーって今のところ思ってます。

ピアノといい第九といい、今年はすごくクラシック音楽が近い存在になった年だったな!
またちょくちょく遊びにきてね♪

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